フィルム時代の鳥見記録(九州) コウノトリ・ヘラサギ・クロツラヘラサギ2023/07/01 11:41

40年近く前のこと、正月休みに鹿児島(出水)、長崎(諫早干潟)、福岡(和白干潟)に鳥見に行った。門司港を出て西鹿児島に向かう夜行急行「かいもん」が運行されていた頃のことである。
諫早干潟は干拓事業で消滅し、その結果シギ・チドリやツクシガモが壊滅的状況になり、代わりに調整池にマガモなど多くのカモが飛来するようになり、害鳥として「駆除」されているらしい。その反面、猛禽類の飛来が増え、ツルが越冬するようになっている(環境省ウェブサイト等)。
干拓事業の是非はわからないが、あの干潟が無くなってしまったことは残念でならない。

目的のツリスガラやツクシガモを見た後、当時は今よりも珍しかったコウノトリやヘラサギがいると聞いていたので、猟銃を持った猟師さんからも情報を得ながら、朝から晩まで堤防上を行き来し続けて、ようやく見つけることができた。
たまたま中村登流先生ご一行と一緒になり、いろいろ教えて頂いたり、干潟のクリークから頭を出していたコウノトリの場所を教えて差し上げたことなど、よい思い出になっている。

その日は潮の具合でカモもサギも遥か遠くにいて、ヘラサギはフィールドスコープでも判別がつかなかったが、後でヘラサギとクロツラヘラサギの両方がいたという情報を得た。300mm+2xエクステンダーで撮った写真には、左の2羽のアオサギの間に1羽、右の方に2羽のヘラサギ類がゴマ粒のような大きさで写っているが、よく見ると、左の1羽と、右の2羽とは随分大きさが違うようであり、左がクロツラヘラサギ、右がヘラサギではないかと思っている。

出水のマナヅル、ナベヅル

和白干潟では、当時は本州では珍しかったミヤコドリを見た。今では三番瀬で簡単に見ることができる。

フィルム時代の鳥見記録(小笠原 その一)母島-メグロ2023/07/03 23:03

旅行予定が前の月に勃発した湾岸戦争のあおりでキャンセルになったので、急遽小笠原に行くことにした。小笠原といえばメグロ、メグロといえば母島である。竹芝から、海流の都合で予定より長く30時間近く掛かって父島の二見港に着いた後、そのまま初代「ははじま丸」で母島に。一泊して宿の近くの林で鳥を探した。 メグロには、ムコジマメグロとハハジマメグロの2つの亜種があるが、基亜種のムコジマメグロは絶滅したと考えられていて、ハハジマメグロだけが残っている。 当時ミツスイ科に分類されていたメグロは、今では分子系統学的解析からメジロ科に分類されている。

人慣れしたハクセキレイ2023/07/05 20:03

フードコートのペット同伴スペースで、座っていた足元に寄ってきたハクセキレイをスマホの広角レンズで撮ったもの。
縦フレームで撮ってしまったものを横長にしたもので、横方向はトリミングしていないのにこのサイズ。
ハクセキレイは人を恐れないとは言われてはいても、足元から10cm程のところまで近づいてきたのは初めてだ。

フィルム時代の鳥見記録(小笠原 その二)母島-ハシナガウグイス2023/07/06 23:12

ウグイスは日本国内には4亜種知られていて(そのうち1亜種ダイトウウグイスは絶滅)、亜種ウグイス(Horornis diphone cantans)はほぼ日本中に、亜種ハシナガウグイス(Horornis diphone diphone)は小笠原群島と硫黄列島に、リュウキュウウグイスは南西諸島にそれぞれ分布していて、それらのうちハシナガウグイスが基亜種である(環境省委託調査「ウグイス識別マニュアル」)。

小笠原でも聟島ではハシナガウグイスが絶滅し、越冬のため渡ってきた本州と同じ亜種のウグイスがいるらしいが(栄村ら「小笠原諸島におけるハシナガウグイスの集団間での形態的・遺伝的な相違」森林総合研究所 研究最前線2013年紹介)、写真の個体は母島で撮ったもので、ハシナガウグイスと思われる。

上の写真はウグイスと特定できる写りではないが、当時の鳥見記録にウグイスと書かれていることからすると、鳴き声を聞いたりしてウグイスと識別したものと思われる。因みに、東京都鳥類繁殖分布調査(https://bird-atlas.jp/tokyo/)の結果では、父島・母島ではウグイス以外にムシクイ類の記録がない。

学名と標準和名-基亜種とは? ウグイスを例として2023/07/08 15:09

先の記事のとおり、ウグイスの基亜種であるハシナガウグイスの学名はHorornis diphone diphoneであり、種小名(真ん中のdiphoneと亜種小名(三番目のdiphoneが一致している。 それとは逆に、標準和名では、基亜種ハシナガウグイスの亜種和名は種和名(ウグイス)と一致しておらず、種和名と亜種和名が一致しているのは本土の亜種ウグイスである。
なぜだろうと疑問が湧いたので、「基亜種」について調べてみた。

国際動物命名規約第4版には「ある種が亜種を含むと考えられる場合、その名義種の担名タイプを含む亜種は、その種と同一の種階級群名で示され、同一の著者と日付を担う。この亜種を名義タイプ亜種という用語でよぶ」と定められている(条47.1)。

上の定義は私のような素人には難解な文章だが、「担名タイプ」は学名の基準となった標本、「種階級群名」は種小名のことで、「名義種の担名タイプを含む亜種は、その種と同一の種階級群名で示され」とは、学名の基準になったタイプを含む亜種は種小名で表されるということのようだ。言い換えれば、「レッドデータブックとっとり第2版」の用語説明(https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/704255/yogo.pdf)にあるように「最初に新種として記載されたほうの特徴をもつ亜種を基亜種または原名亜種とよび、種小名と亜種小名が同じになる」ということだ。そして、基亜種や原名亜種といわれてきたのは、この名義タイプ亜種のことだ。
ウグイスは、基亜種ハシナガウグイスでは規約どおり種小名と亜種小名が一致していて、亜種ウグイス(H. diphone cantans)や亜種リュウキュウウグイス(H. diphone riukiuensis)では、種小名とは別の亜種小名が付けられているのは、最初にハシナガウグイスが新種として登録され、その後に亜種ウグイスやリュウキュウウグイスが登録されたからだ。

因みに、ウグイス(Horornis diphone )の場合、Horornisが「属(名)」でdiphoneが「種(名)」と思われがちのようだが、上記規約(条5)によれば、種名(species name)は属名(genus又はgeneric name)と種小名(specific name)の結合(二語名)であり、「Horornis diphone」が種(名)ということだ。このspecific nameとspecies nameの区別のために、日本語では種「小」名と訳されたのだろう。

一方、標準和名については規約のようなものはなく、産業界や学界などで慣習的に用いられてきたものに過ぎない。鳥類では、日本鳥学会が発表している日本鳥類目録における標準和名が定着している。そこでは、主要な亜種の和名は種和名と一致させるという原則がある(日本鳥類目録第6版「はじめに」。但し、第8版では例外が設けられている)。そして、爬虫類両生類学会報 2000(2):99によれば、日本産鳥類リスト(日本鳥学会目録編集委員会, 1997)には種・亜種の和名の選定の原則をあげられていて、それによれば、「日本に二亜種以上が存在する場合(迷鳥を含む)、日本で繁殖する亜種(2亜種以上繁殖する場合は本州、特に本州中部以北の亜種)、もしくは一番普通の越冬亜種の和名は種の和名と同じとし、その他の亜種にそれぞれ別の亜種名を与える」とのことであり、種名の「タイプ種」の替わりに、種和名のタイプとして「普通種」が用いられると考えればよいだろうと結んでいる。そのような例としていみじくもウグイスの例が挙げられている。
因みに、メグロでは、主要な(というより現在では唯一の)亜種はハハジマメグロで、基亜種はムコジマメグロであって、メグロという亜種名がないのは上記例外によるものらしい(日本鳥学会 鳥学通信「日本鳥類目録第8版の編集について」(http://ornithology-japan.sblo.jp/article/189745707.html))。

結局、亜種名が種小名又は種和名と一致しているのは、学名では先に登録された亜種であり、標準和名では主要な亜種であるという違いがあり、ややこしいが、コマドリやアカヒゲの学名に比べればマシな方だろう。
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